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第10話 嗜虐的な瞳の禁断提案

last update Last Updated: 2025-11-23 09:30:52

 領主ミヒャエル・ツヴァルクの年端は二十程。容姿は極めて端麗らしいが、その性格は非常に掴み所もなく傲慢だそうだ。

 彼がツヴァルクの領主になったのは、ほんの数年前──彼の父である前領主が逝去してからだった。

 ……たった数年でクビになった使用人の数は数知れず。

 稼ぎの良い商人たちに重税を課せるようになったそうで、高所得者ほど生活がやや厳しくなったらしい。

 ましてや税金に取り立てに来る彼の側近がこれまた恐ろしいらしい。

 やり口がゴロツキや盗賊だのと変わらないとまで称されている。

 しかし、どうにもこれが領地の整備や商業の繁栄など辺鄙へんぴな田舎町の開花に大きく繋がっており、文句を言うに言えないのだそう。

 ましてや木こりや船乗りなど天候などに左右される職種や葡萄畑で働く労働者はじめ、イルゼたちのような畜産業を行う低所得者にのしかかる税金は軽くなった。

 そんな彼は、滅多に表に出ることが無いそうだが、それでも領主としては立派な働きをしているそう。

 しかし、人間としては違うそう。どう足掻いたって〝変人〟らしく、良い印象なんてまず無い。

 なぜなら、若い娼婦を束ねて買うなど、淫蕩いんとうの限りを尽くしている等、女に纏わる噂が尽きないのだ。

 猟奇に関しては、買った女の経血を飲むのが好むだとか、行為の中で女性にひどいことをする……という話をリンダがイルゼをいびる中で言っていたのを聞いた。

 〝あんたなんて、猟奇領主に犯されてバラバラにされればいい〟なんて……。

 そんな彼は、金髪の娘に尋常でない執着を持っているそうで、金髪の娘を城に連れて行っただの、金髪の娼婦を束にして買っただのと、ヨハンから聞いたことがあった。

 だから、綺麗な金髪──と、先程言ったのだろうか。

 イルゼが彼の言動を反芻はんすうしていれば、ミヒャエルはテーブルに置かれたメモ書きをつまみ上げて目を通す。
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